派遣登録の契約解除
あなたがこれから派遣の仕事をしたいと思うなら、ぜひ知っておいてほしいことがあります。それは「契約解除」について。
まだ契約もしていないのに解除のことなんて…と思うかもしれませんね。でも、派遣社員にとって身近であり、同時にとても重要なことなのです。
契約解除には大きく分けて2つあります。1つは派遣スタッフ(あなた)が自己都合で中途解除する場合、そしてもう1つが、派遣会社や派遣先企業があなたを契約解除(解雇)する場合です。今回はこの2つについて詳しくご説明していきたいと思います。ぜひ、参考にしてみてください。
派遣社員の雇用契約って何?
あなたが派遣として働く場合、まずは派遣会社にスタッフ登録を行います。この時点では、単に登録をしたというだけで、まだ「雇用契約」は結ばれていません。
派遣会社に仕事を紹介してもらい、勤務先(派遣先企業)が決まった時点で「雇用契約」を結びます。そして派遣期間が満了になると同時に、雇用契約は終了します。
あなたが実際に仕事するのは派遣先企業ですが、あなたに給料を払うのは派遣会社です。つまり雇い主は派遣会社ということになります。
派遣会社 | 派遣先企業 |
---|---|
雇用契約(あなたの雇い主) | あなたの勤務先 |
給与の支払い/福利厚生/派遣先企業との交渉 | 仕事内容の指示・命令 |
派遣登録の解除はいつでもできる
派遣登録をしたけれども、何らかの理由で登録を解除したいという場合があると思います。例えば、正社員の仕事が決まった、結婚するのでひとまず派遣はやめる、あまり仕事を紹介してもらえないのでほかの派遣会社に変えたい、など理由は人それぞれです。そんな時はどうすれば良いのでしょうか。
答えはとても簡単。派遣会社に登録を解除したい旨を伝えるだけです。電話だけで済む場合や、一度派遣会社に出向いて書類などを提出する必要がある場合もありますが、いずれにしても派遣登録はあなたが解除したいと思ったときにいつでもできます。
ただ、出産や育児などが理由で一時的に派遣の仕事から離れるのであれば、解除せずに籍を置いておくことも可能です。
そうした方が、子どもが大きくなって仕事を再開したいと思ったときに、再度登録をする必要がありません。その場合は、派遣会社に紹介を止めてもらうよう伝えるだけでOKです。
雇用契約の解除は基本的にはできない
派遣登録の解除はいつでもできると言いましたが、仕事を紹介され、派遣先企業で働いている間は基本的に契約解除できません。
契約解除は派遣元にも派遣先にも迷惑をかける
企業に派遣されて仕事をしている期間、あなたは派遣登録とは別に、派遣会社と「雇用契約」を結んでいます。やむをえない事由なく雇用契約を解除することはできないのです。
もしも正社員やパート・アルバイトなら、辞める際の責任は全て本人が負うことになります。しかし、派遣スタッフの管理・指導は派遣会社の責任であるため、正当な理由なく辞めてしまえば、派遣会社の信用問題になってしまいます。
最悪の場合、今後その企業から派遣の依頼が来なくなってしまう可能性もあります。
もちろん、急に辞められてしまったことにより、任せていた仕事が中断したり、納期が遅れたりと派遣先企業にも迷惑がかかります。
ですから、一度契約して受けた仕事はよほどのことがない限り全うしなければなりません。
職場の人間関係は契約解除の理由にはならない
実際に仕事を始めてみたら、上司とウマが合わない、女性が多い職場環境になじめないなんてことありますよね。人間関係の悩みはとても深刻なものです。しかし、こういったことは「やむを得ない事由」にはなりません。
どうしても続けたくないと感じる職場だったとしても、雇用期間内はしっかり勤め、更新は見送るという方法を取る必要があります。
職場に溶け込めるかなどの不安がある場合は、契約期間を短期に設定するのも一つの方法です。派遣会社の担当者に相談し、一度短期で仕事をスタートさせてから、職場の雰囲気を確認して更新すれば、ミスマッチを防ぐことができます。
仕事内容が事前の説明と違った場合は?
あなたに非がない場合、例えば「職務内容や労働環境が事前の説明とは違う」といった理由で契約解除することは可能なのでしょうか。
実は、このようなケースの場合でも、すぐに契約解除とはなりません。理由としては、話し合いによる問題解決の可能性が十分に考えられるからです。
事前の説明と違う仕事を任されたりした場合、まずは派遣会社に相談し、派遣先企業と仕事内容について確認を取ってもらいましょう。
派遣スタッフの都合で契約解除が認められるケース
では、「やむを得ない事由」とはどんなことでしょうか。
たとえば、自分自身の健康上の理由で働くことが困難な場合や、長期の入院・療養が必要な場合などは、契約途中の解除でも認められることが多いでしょう。また家族の介護や看病などの理由も納得してもらえるはずです。
一方、やむを得ない事由には当てはまりませんが、正社員の仕事が決まり、すぐに入社しなければいけない場合なども、多くの派遣会社では認めてくれる場合があるようです。
ただし、先ほどもご説明したとおり、契約の中途解除はどんな退職理由であれ、派遣先の企業にも派遣会社にも迷惑をかけてしまうことには変わりありません。きちんと誠意を持って説明し謝罪する必要があります。
そして、その際は必ず派遣会社の方に先に事情を説明するようにして下さい。
派遣先企業は派遣社員の契約解除をすることはできない
では、たとえば「仕事が遅い」「能力不足」「やる気が感じられない」などを理由に派遣先企業が派遣スタッフの契約を途中解除することはできるのでしょうか。実はこちらも答えは「NO」です。
派遣スタッフと派遣先企業の間に雇用契約はない
派遣スタッフが雇用契約を結んでいるのは派遣会社であって、派遣先企業ではありません。もともと雇用契約関係にないため、契約解除(解雇)することはできないのです。
派遣スタッフが何かトラブルを起こし、懲戒解雇されてもしかたがないほどの損害を派遣先企業に与えた場合などは、派遣元の派遣会社が契約解除することになります。
派遣先企業の経営が悪化した場合はどうなる?
では、派遣先企業の経営状況が悪くなったり、事業の終了などが理由で中途解約された場合はどうなるのでしょうか。
この場合、派遣元である派遣会社は、当初契約した期間の間、派遣スタッフの雇用を守るため、仕事を続けられるようできる限りのことをしなければなりません。
派遣先企業は、同等の条件のもと派遣スタッフが仕事に就けるよう、関連会社などに就業先を確保したり、派遣会社も新たな仕事を紹介するなど、安定した雇用を保障するべく努めるよう法律で定められているのです。
派遣スタッフに働く意欲があるにも関わらず、契約解除されたために働くことができない状態になった場合は、派遣先企業は30日分以上の賃金相当額を損害額として支払う義務があります。これを解雇予告手当といいます。
契約解除の通告は遅くとも30日前までに行わなければならない
派遣解除の通知は、30日以上前にすることが定められています。通知は、派遣先企業の上司ではなく、派遣会社の担当者との面談で言い渡されるのが一般的です。
もし、契約解除予告が解除日から起算して30日未満だった場合、その日数以上の賃金相当の賠償を、派遣先企業は支払わなくてはいけないという取り決めがあります。
ただし、これは30日以上の賃金相当分を補償さえすれば、派遣契約期間中であっても契約解除ができるというものではありません。
例えば、6ヶ月契約で仕事をスタートし、派遣先企業の都合により3ヶ月で打ち切られることになった場合、30日以上の賃金補償さえすれば契約解除は自由にできる、というものではないということ。
派遣スタッフサイドには、契約当初の「6ヶ月契約」というものが生きています。それなのに、派遣元である派遣会社には、派遣スタッフを雇用不安定な状態にしてしまったという責任が出てくるのです。
以上の理由で、派遣先から契約解除された場合、派遣スタッフは残りの契約期間について、同等の条件、期間の派遣先紹介を派遣会社に求めることができます。新しい仕事が得られなかった場合は、契約満了まで勤めていたとしたら支払われていたはずの報酬を賠償請求することも可能です。
派遣スタッフとの顔合わせ後の契約解除はNG
では、雇用契約を結ぶ前に派遣先企業が派遣スタッフを断ることは、問題ないのでしょうか。実はこれもNGです。
派遣スタッフとの顔合わせ後、派遣先企業からの一方的な契約解除は、派遣法上してはいけないことになっています。そして、顔合わせという名のもとの採用面接や選考も、法律で禁止されています。
派遣スタッフと契約を結ぶのは、派遣会社です。派遣会社が採用した人物に対して、派遣先企業が採用可否を決める権利はありません。
仕事を始める前に、職場見学に行くくらいは問題ないのではと感じるかもしれませんが、そこで派遣先企業が採用不採用を決めるのであれば、通常の面接と変わりないため派遣会社が介在する意味がなくなってしまいます。
派遣会社と派遣スタッフ、派遣会社と派遣先企業、それぞれが契約し、交渉するからこそ成り立つのが「派遣」という仕事の仕方です。ですから、契約前とは言え、企業に紹介された後の契約解除は違法となります。
派遣契約中の中途解除で問題が起きて損害賠償が出るケースはあるのか?
期限つきの雇用契約の場合、その契約期間中に「契約解除された側」は損害賠償請求する権利を持っています。
派遣先企業が、一方的な事情で派遣スタッフの契約を途中解除した場合、派遣会社は本来の契約満了日まで会社都合で休業させることになり、その期間は平均賃金の6割以上の休業手当を補償する必要が出てきます。
その上、新しい仕事を紹介する目途がつかず、即時解雇しなくてはならない状況に陥った場合は解雇予告手当を支払わなくてはなりません。このように、中途解除により派遣会社に生じた損害を、派遣先企業は賠償しなくてはいけません。
同様に、派遣スタッフが自己都合で契約満了前に契約解除をした場合は、派遣先企業から損害賠償請求をされる場合もあります。
急な契約解除で派遣スタッフが居なくなることは、派遣先企業にとって損失。会社の業務に支障が出るかもしれないということになり、損害賠償が請求されることもあるのです。
契約期間満了後の契約解除で問題になることもあるのか?
派遣契約期間が終了すると、権利や義務、法律関係の縛り等は効力を失います。契約期間が満了という形で退職、つまり契約解除となる場合は、その後、なにか問題になるということは基本的にありません。
就職に伴う派遣登録解除の方法
就職を理由に、契約満了を待たずに派遣の契約解除をすることはできるのでしょうか。実は、これは法律的には問題ありません。
ただ、先ほども述べたように、派遣スタッフが契約期間中に契約解除することは、決して良しとはされていません。「就職先が決まったから」という理由で契約解除を希望するのは、社会人としてはマナー違反となります。
とはいえ、就職を希望しているものの、収入がないのは困るといった理由から、転職活用をしながら派遣社員として仕事をするという方もいらっしゃるでしょう。
そういう時は、あらかじめ派遣会社には「正社員としての就職を希望していて、派遣社員として仕事をしながら転職活動をするつもりである」と伝えておきます。
そして、契約期間は短めに設定しておくと、いざ内定が取れたときにも安心です。派遣の仕事をおろそかにさえしなければ、基本的に転職活動をしながら派遣スタッフとして仕事をしても問題ありません。
ただ、大切なのは派遣会社にも、企業側にも、迷惑を掛けない仕事の辞め方をすること。転職先も「派遣契約期間中ですが、契約解除してこちらに伺います」というような人物を、どう思うでしょうか。
正社員として採用された場合、勤務開始可能日を確認されます。その時に、現在派遣として勤務していること、何月何日に契約満了となるので、それ以降ならいつでも出勤できることを伝えます。
常識的な企業であれば、派遣の契約を無理に解除してまで入社を早めるようには言いません。社会人としてのマナーを守って、気持ちよいスタートを切れるように努めましょう。
まとめ
2015年9月には、新たな労働者派遣法の改正案が施行されました。現在、派遣の労働条件や待遇改善を目指して、さまざまな取り組みがされています。
一方で、派遣スタッフ側は、何か問題を起こした場合でも、実際にペナルティを課されることはほとんどないというのが現状です。その結果、派遣スタッフ自身が「派遣だから」とその地位を軽んじたり、簡単な気持ちで仕事を辞めたりするケースも、残念ながら見られます。
派遣先企業が派遣スタッフを契約期間中に契約解除すると、さまざまな社会的な責任を負う法律があるように、派遣スタッフも同じくらいの覚悟で仕事を引き受ける必要があります。
そのようにして一人ひとりが誠意を持って務めることが「派遣スタッフ」の地位向上につながるのではないでしょうか。仕事に誇りを持ち、真剣に向き合いながら、派遣スタッフとして活躍してくださいね。
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